「光のお祭りをしよう」
２００６年１２月１７日
テキスト イザヤ書 第９章１節～６節
「闇の中を歩む民は、大いなる光を見／死の陰の地に住む者の上に、光が輝いた。
あなたは深い喜びと／大きな楽しみをお与えになり／人々は御前に喜び祝った。刈り入れの時を祝うように／戦利品を分け合って楽しむように。
彼らの負う軛、肩を打つ杖、虐げる者の鞭を／あなたはミディアンの日のように／折ってくださった。
地を踏み鳴らした兵士の靴／血にまみれた軍服はことごとく／火に投げ込まれ、焼き尽くされた。
ひとりのみどりごがわたしたちのために生まれた。ひとりの男の子がわたしたちに与えられた。権威が彼の肩にある。その名は、「驚くべき指導者、力ある神／永遠の父、平和の君」と唱えられる。
ダビデの王座とその王国に権威は増し／平和は絶えることがない。王国は正義と恵みの業によって／今もそしてとこしえに、立てられ支えられる。万軍の主の熱意がこれを成し遂げる。」
今日は、親子合同礼拝式として特別の礼拝を捧げています。いつもは、日曜学校の子ども達は自分たちだけの礼拝を捧げています。今朝は大人の時間帯で、大人の方々と一緒に礼拝を捧げています。その意味で、いつもよりお話は少し長くなりますし、すこし難しいところもあるでしょう。がんばって、いつものように集中して聴いてください。もう一つ特別なのは、今日は、イエスさまのお誕生をお祝いする礼拝式であるということです。
教会の外の看板には、毎週、大人の礼拝式の説教の題が掲げられています。皆さんはご覧になったでしょうか。「光のお祭りをしよう」と書かれていました。今日は、クリスマスのお祝いの礼拝式ですね。どうしてそれが光のお祭りとなるのでしょう。実は、クリスマスのお祝いのことを、昔から「光の祭り」と呼ぶこともあったのです。
今日、みなさんと読みました聖書の御言葉は旧約聖書です。その中のイザヤ書を読みました。イザヤ書には、神さまの御言葉を告げた預言者イザヤさんの言葉が記されています。今から２７００年も昔の人です。ということはイエスさまがお誕生くださる７００年以上も昔のことです。イザヤさんは、神さまからとても大切な言葉を与えられて、イスラエルの人々に語りつげました。そのなかでも最も大切なことは、やがて、イエスさまがお生まれ下さるのだという予言でした。
イザヤさんが生きていた時代は、いったいどんな時代であったのでしょうか。それは、もともと一つの国であったイスラエルという国が、北と南に分裂してしまっていました。そればかりではありません。北イスラエルという国は、アッシリアという国によって滅ぼされてしまったのです。自分たちの国がなくなってしまったのです。神さまが祝福してくださったはずのイスラエルの国がお互いに喧嘩して二つに別れてしまうことだけでも、悲しいことです。しかも今は、その北イスラエルの国も、なくなってしまったのです。どうしてそのようなことが起こってしまったのでしょうか。それは、イスラエルの王様がまことの神さまへの信仰を失ってしまったからです。そればかりか、イスラエルの人たちも、神さまを第一にしなくなっていたのです。まことの神さまではなく、偶像を拝むようになっていました。
第８章１９節にこのような御言葉があります。「人々は必ずあなたたちに言う。『ささやきつぶやく口寄せや、霊媒に伺いを立てよ。民は、命ある者のために、死者によって、自分の神に伺いを立てるべきではないか』と。そして、教えと証しの書についてはなおのこと、『このようなことばにまじないの力はない』と言うであろう。」
つまり、イスラエルの人々は、こんなことを言ってはばからなかったのです。「まことの神さまの御声、御言葉なんかどうでもよい、占いとか霊媒とかの方が、よく当たる、教えとか証の書、つまり聖書なんかどうでもよい、聖書には、占い師や霊媒師のような力はない。」王さまをはじめ、多くの人たちが、神さまの御言葉を語る預言者を無視し、まことの神さまを忘れ、無視し、背いていたのです。
けれども預言者も負けていません。一生懸命、警告しました。「そんな占いや悪霊、その人の守護霊だとかに頼っているかぎり、あなたたちは苦しみから逃げられません。」ところが、そんなことを言えば言うほど、イザヤさんたち預言者は、嫌な顔をされるだけでした。しかし、神さまの言葉は正しいのです。事実、神さまが言われたとおりになってしまうのです。
つまり、その後ただちに、北イスラエルの国にある町々、「ゼブルンの地、ナフタリの地」は、アッシリアという国に攻め込まれて、国は奪われてしまったのです。イザヤはそのようなあまりにも悲しい、苦しい現実を見つめているのです。自分の国が亡くなって、人々が殺されて行くのを、どんな思いでイザヤさんは見ていたのでしょうか。
実は、イザヤさんが住んでいたのは、南の国、南ユダ王国と言うのですが、その国も、同じような問題をもっていました。神さまを信じる王さまより、そうでない王様の方が多くなっていたからです。このまま行けば、北イスラエルと同じになるのは、目に見えていました。そして、実は、それから１５０年ほど後、南ユダ王国もバビロニアという国に滅ぼされてしまうのです。
イザヤは心の底から、このように願っていたと思います。「占いとか霊媒とか、偶像とかに夢中にならないで、天と地をお造り下さったわたしたちの神さまのもとに、ごめんなさい、わたしたちの不信仰をお赦しくださいと悔い改めなさい。」
皆さんは知っているでしょうか。今から６０年前の日本の国、この名古屋の町のことを。この名古屋の町にもたくさんの飛行機がやってきました。そんなことは今でも、あたりまえと言うかもしれませんね。今、僕たち私たちの頭の上には、何十機も何百機も飛んでいます。けれどもあのときは、何しにやってきたのかというと、空から爆弾を落とし、機関銃で撃つためにやって来たのです。日本もまたアジアの国々に出かけていって、大勢の人々を殺しました。そして日本は、戦争に負けたのです。でも日本の国は残りました。でも、それは、これまでの戦争をする国としてではなく、これからは二度と戦争をしない新しい国となるためでした。ところが今、もう一度、この国は、ものすごい勢いで昔の国に戻り始めています。
６０年も昔の日本の戦争のことは、ぴんと来ないお友達も多いでしょう。でも今、日本中の多くの学校では「いじめ」の問題があります。子どもたちはこう言うかも知れません。「僕たち私たちは、誰も人を殺したりはしない。人の頭の上に爆弾を落とすようなことはしない。」なるほど、そうですね。大切なことです。でも、そんな僕たち私たちがもしも、クラスのお友達の誰かを無視したり、意地悪をするのなら、それも神さまの前では同じような罪なのです。クラスの誰かのことを、「あんな人はいなくなってもかまわないと考えたり、いなければいい、いないことにしよう」なんて、考えて無視したり、悪口をみんなで言ったりするなら、それは、すでに、心の中でその人をいなくしていること、つまり、殺していることです。その子の頭の上に爆弾を落としているわけです。それが、２７００年前の昔のことではなく、６０年前のことでもなく、今の世界ではないでしょうか。僕たち私たちの世界です。それは、なんと暗い世界でしょうか。真っ暗闇です。いじめのこと、これは、学校のなかだけの問題ではありません。大人の社会の問題です。世界は、今、強い人が弱い人をいじめるようなことが堂々と行われています。
どうしてそんな恐ろしい、悲しい、真っ暗闇の世界になってしまったのでしょうか。はっきりとした理由があります。それは、人間が、目に見えない真の神さまを見失って、神さまに反抗し、自分中心、自己中心、人間中心の世界にしてしまったからです。そのような世界は、いつでも悲しみや不安、恐れや心配、涙や痛みで満ちています。
しかし今、イザヤさんは、自分たちの罪によって自分たちの国が亡くなってしまった人たち、真っ暗闇の世界に生きているイスラエルの人々に、神さまのすばらしい約束の言葉を告げます。それが今日、読んだ聖書の箇所なのです。「闇の中を歩む民は、大いなる光を見／死の陰の地に住む者の上に、光が輝いた。」
どうして、市の陰の谷を歩いている人々の上に、爆弾を積んだ飛行機ではなく、光が輝くのでしょうか。
イザヤさんはこう言います。「ひとりのみどりごがわたしたちのために生まれた。ひとりの男の子がわたしたちに与えられた。権威が彼の肩にある。その名は、「驚くべき指導者、力ある神／永遠の父、平和の君」と唱えられる」つまり、「すばらしい王さまがやがて生まれるからです」と言うのです。「ひとりのみどりご」赤ちゃんです。男の子です。わたしたちのために生まれるのです。権威をもった真の王さまです。
「驚くべき指導者」すばらしい指導者です。英語では、「ワンダフル・カウンセラー」と言います。占い師や霊媒師ではないのです。どんな相談事でも持ち込んで、解決していただける人、王さまなのです。すばらしい、驚くべきカウンセラーなのです。
「力ある神」それは、絶対に負けない王さまであるという意味です。
「永遠の父」この王さまはまるで神さまのように永遠までしかもやさしく、いつくしみ深く育ててくださるのです。
「平和の君」この王さまは、自分の国だけではなく、世界中を平和に治めることができる王様であるという意味です。
イザヤさんは、このようなすばらしい王さまが、わたしたちのために生まれる、わたしたちのために王さまが生まれるというのです。神さまの熱意がそのようなすばらしいことを実現してくださるというのです。
そんな王さまが日本だけではなく、アメリカもイラクも、イギリスもアフリカの国々も治めてくだされば、どんなにすばらしいかと先生は、思います。でも、もしかすると皆さんの心のなかで、「そんなのありえないよ」と言うでしょうか。あるいはこんなことを思うかもしれません。「世界のことなんかではなく、わたしの心の中には、悲しみがいっぱいあるし、苦しいこともある。そんなすばらしい王さまが世界にいても、たった一人の小さなわたしのことなんか、忙しくて助けてはくれないよなぁ」
心配ありません。大丈夫です。どうしてでしょうか。それは、この「ひとりのみどりご」赤ちゃんとは、イエスさまのことだからです。イエスさまは、世界の王さまですし、僕たち私たち一人ひとりの王さま、驚くべき指導者なのです。助けてくださるのです。
それでもある人はこう言うのです。「イエスさまが生まれてからも、世界中には暗いこと、悲しいこと、殺し合いがずっと続いているのではないですか。今の世界は、昔と比べて、良くなっていませんよ。」その通りです。ヨハネによる福音書の第1章には、こう書いてあります。「命は人間を照らす光であった。光は暗闇の中で輝いている。暗闇は光を理解しなかった。」暗闇は光を理解しませんでした。だから、イエスさまは、殺されてしまいました。でも、イエスさまは、十字架で死んだあと、三日目にお甦りになられました。決して負けなかったのです。むしろ、僕たち私たちの心の闇、世界の暗闇、それを聖書は罪といいますが、この罪の刑罰の神さまの怒りを、イエスさまが十字架で身代わりに死んでくださることによってお受けくださったのです。こうして、イエスさまは、全人類を救うことがおできになるのです。
確かに今でも、まだまだ、大勢の人たちがこのイエスさまの光を受けようとしません。理解しようとしません。とても悲しいことです。けれども、イエスさまは、そんな罪深い人間を諦めはなさらないのです。「もうだめだ」と、お捨てにはならないのです。
どうしてかって言うと、イエスさまは、神さまの御子ですが、僕たち私たちと同じ本物の人間となられたからです。もう、永遠にずっとずっと、人間でありつづけてくださるのです。そうであれば、どんなに、人間がイエスさまに反抗し、イエスさまを無視して、神さまの造られた美しい世界を壊してしまって、神さまを悲しませ、憤らせても、もはや、神さま、天のお父様が僕たち私たちをお見捨てになることはないのです。僕たち私たちがどんなに悪い子であっても、たといいじめっ子であったとしてもです。
最後に、イザヤさんのとても不思議な言い方に注意して終わりたいと思います。「ひとりのみどりごがわたしたちのために生まれた。」イエスさまがお生まれになられる７００年前にこう言ったのです。イエスさまは、陰も形もありません。生まれていないのです。それなのに、「生まれた」なんて言うのは、おかしいと思うかもしれませんね。でも、イザヤさんは、そう神さまから聴いたのです。つまり、神さまは、もうそのとき、ちゃんとお決めになっておられるのです。必ず、そのような王さまを生まれさすと、神さまはお定めになっておられるのです。だから、イザヤさんは、「生まれた！」と言うしかなかったのです。そしてイエスさまは、イザヤさんが告げたとおり、本当にガリラヤの町、北イスラエルの国にあった町の小さなベツレヘムという村にお生まれになられました。
イエスさまは、十字架で死んでくださり、お墓の中からお甦りになられたあと、天に昇られる前に、こう約束されました。「見よ、わたしは世の終わりまであなたがたとともにいる。わたしはすぐに来る。」「すぐに来る」って言っても、もう２０００年経っています。イエスさまはお忘れになられたのでしょうか。違います。思い出してください。イエスさまがお生まれになられたのは、イザヤさんが「生まれた」と言った７００年後です。神さまは、約束を守られます。ちゃんと、お決めになっておられます。
神さまの救いのお働きは、今、もうここで始まっています。神さまは、将に来たりつつあるのです。ですから、安心して、待っていましょう。なによりも僕たち私たちは今朝、この光のもとに、来ているのです。礼拝式は、この命の光、イエスさまの暖かな命の光を浴びる場所です。皆さんの頭の上には、大いなる光が、輝いています。この光を見ましょう。この光を信じましょう。この光、イエスさまを信じましょう。そしていつまでもこの光から離れないようにしましょう。この光を見上げれば、この光を浴びれば、どんな人でも直ちに「光の子ども」にしていただけます。自分が光るのではなく、イエスさまの光を浴びているから光の子どもにされていますのです。
光の子ども、神さまの子どもは、安心して、今の暗闇と戦う子どもです。自分の心の闇のなかに閉じこもらずに、イエスさまのところに行きましょう。光を浴びる場所、この教会に、この礼拝式に毎週、戻ってきましょう。
祈祷
天のお父様、僕たち私たちは今、イエスさまの光の下にいます。どんなに汚い心、暗闇の心を持っていても、今、教会の、礼拝式の中で光に照らされています。そのようにして、僕たち私たちは今すでに光の子どもとされています。心から感謝します。イエスさまの光をいっぱい浴びて、僕たち私たちも、イエスさまの光を輝かせるようにしてください。アーメン。
